秋。19歳になったミミは、この町にお針子としてやってきた。
ミミが住むことになったアパルトマンの隣の部屋からは
いつも美しいピアノの音が聞こえてきた。
隣人は作曲家なのだろうか。
その曲はまだ途中までしか出來ていないようだった。
ミミはその澄んだ音色に戀をした。
秋天。19歲的咪咪來到這個城市做裁縫。
在咪咪住的公寓總能聽到
隔壁房間傳來的美妙鋼琴聲。
鄰居是作曲家吧?
那首曲子似乎才譜寫到一半。
咪咪愛上了那個澄澈的音色。
ある日、シャツのボタンが取れたのでつけてほしいと
男がひとり訪ねてきた。
男は隣に住んでいるピアニストで、名前はルカだと言った。
ルカの髪の色も瞳の色も、あのピアノの音色のように澄んでいた。
有一天,來了一個男子
說襯衫的扣子掉了,想要釘上。
他是住在隔壁的鋼琴家,名字叫路卡。
路卡的頭發(fā)和瞳仁的顏色都像那鋼琴的音色一般澄澈。
ルカはよく、シャツのボタンが取れてしまったと言って
ミミの部屋にやってくるようになった。
ミミはその度に、お気に入りのボタンをルカのシャツに縫いつけた。
色も形もバラバラだった。
ルカはそれを、すごくオシャレだと言って笑った。
ミミはルカに戀をした。
路卡總是說襯衫的扣子掉了
來到咪咪的房間。
咪咪每次都把喜歡的扣子釘在路卡的襯衫上。
色彩繽紛,形狀各異。
路卡總是笑著說那樣子很俏皮。
咪咪愛上了路卡。
冬。屋上につながる階段を見つけたと言って、
ルカはミミをアパルトマンの屋上に連れ出した。
聲さえも凍ってしまいそうな寒さの中、
ふたりはだまって手をつないで星空をながめた。
冬天。路卡說發(fā)現了通往屋頂的樓梯,
帶著咪咪到公寓樓的屋頂。
寒冷似乎把聲音都凍結了,
兩個人沉默著,牽手望著星空。
雪が降り続いて外に出られない日には、
ミミとルカは部屋の電気を消して
白い壁にスライドを映して一緒にながめた。
二重に架かった虹、砂漠の星空、
オーロラの空の下で凍るシャボン玉・・・
ふたりは空想の中で色々な國を旅した。
大雪連天不能外出的日子里,
咪咪和路卡關掉房間里的燈
一起觀看映在白色墻壁上的投影。
雙層的彩虹,沙漠的星空
極光籠罩的天空下結冰的泡泡……
兩個人在空想中的各個國家旅行。
出會った頃からずっと未完成の曲を弾きながら、
部屋によく來ていた黒貓が來なくなったねとルカが言った。
淋しいねとミミは言った。
ルカはピアノを弾く手を止めて、
この曲は、離ればなれになっても、必ずまたどこかで會えるっていう
テーマで作っているんだ、きっとまた會えるよと言って、
また続きを弾き始めた。
路卡一邊彈奏著相遇至今一直未完成的曲子
一邊說著經常來到房間的黑貓不來了呢
咪咪說好冷清啊
路卡彈琴的手停了下來
即便離別,也一定會在某個地方再會
這首曲子就是為這個主題而作,一定會再遇見的哦
說著又開始彈奏
春。出會ってから25個目のボタンをルカのシャツにつけた次の日、
ミミの部屋のポストに小さな鍵を殘してルカはいなくなった。
ミミはその鍵でルカの部屋の扉を開けようとした。
でも鍵は全く合わなかった。
ミミは毎日ルカの帰りを待った。
でもルカの部屋のピアノが鳴ることはもうなかった。
春天。為路卡釘上相遇以來第25個扣子的第二天,
咪咪房間的郵筒里留下一把小鑰匙,路卡不見了。
咪咪想用那把鑰匙打開路卡的房門
但是根本不合適
咪咪每天等著路卡回來
但是,路卡的房間再也沒有響起鋼琴的聲音
夏。ミミのもとにひとつの小包が屆いた。
差出人はルカで住所はパリからだった。
急いで開けると中には鍵のかかったオルゴールが入っていた。
ルカが殘していった鍵はこのオルゴールにぴったりと合った。
開けるとルカがいつも弾いていたあの曲が流れだした。
オルゴールの中にはミミが今までにルカのために縫い付けてあげた
25個のボタンと、小さな封筒が入っていた。
夏天。咪咪收到一個包裹。
寄件人路卡,住址巴黎
急忙打開,里面是一個加鎖的八音盒
路卡留下的鑰匙正好能打開這個八音盒
打開后,流淌出路卡以前一直彈奏的那首曲子
八音盒里裝著咪咪至今為路卡釘上的25個扣子
和一個小信封。
封筒の中には、パリで開かれるピアノリサイタルのチケットが入っていた。
演奏者の名前はルカだった。
チケットの裏には一言だけ、こう書いてあった。
シャツのボタンが取れてしまったから付けに來てほしい ールカー
オルゴールの曲は最後まで完成していた。
その音色に誘われるように、あのいなくなった黒貓が部屋に入ってきた。
信封里裝著將在巴黎舉辦的鋼琴獨奏會入場券。
演奏者的名字是路卡。
入場券上只寫了一句話。
襯衫的扣子掉了,想讓你來釘。 ——路卡——
八音盒的曲子演奏完了。
好像受到那個音色的吸引,那只消失的黑貓來到了房間里。
ミミはまたルかに戀をした。
咪咪還是愛著路卡。
おわり
終
ミミが住むことになったアパルトマンの隣の部屋からは
いつも美しいピアノの音が聞こえてきた。
隣人は作曲家なのだろうか。
その曲はまだ途中までしか出來ていないようだった。
ミミはその澄んだ音色に戀をした。
秋天。19歲的咪咪來到這個城市做裁縫。
在咪咪住的公寓總能聽到
隔壁房間傳來的美妙鋼琴聲。
鄰居是作曲家吧?
那首曲子似乎才譜寫到一半。
咪咪愛上了那個澄澈的音色。
ある日、シャツのボタンが取れたのでつけてほしいと
男がひとり訪ねてきた。
男は隣に住んでいるピアニストで、名前はルカだと言った。
ルカの髪の色も瞳の色も、あのピアノの音色のように澄んでいた。
有一天,來了一個男子
說襯衫的扣子掉了,想要釘上。
他是住在隔壁的鋼琴家,名字叫路卡。
路卡的頭發(fā)和瞳仁的顏色都像那鋼琴的音色一般澄澈。
ルカはよく、シャツのボタンが取れてしまったと言って
ミミの部屋にやってくるようになった。
ミミはその度に、お気に入りのボタンをルカのシャツに縫いつけた。
色も形もバラバラだった。
ルカはそれを、すごくオシャレだと言って笑った。
ミミはルカに戀をした。
路卡總是說襯衫的扣子掉了
來到咪咪的房間。
咪咪每次都把喜歡的扣子釘在路卡的襯衫上。
色彩繽紛,形狀各異。
路卡總是笑著說那樣子很俏皮。
咪咪愛上了路卡。
冬。屋上につながる階段を見つけたと言って、
ルカはミミをアパルトマンの屋上に連れ出した。
聲さえも凍ってしまいそうな寒さの中、
ふたりはだまって手をつないで星空をながめた。
冬天。路卡說發(fā)現了通往屋頂的樓梯,
帶著咪咪到公寓樓的屋頂。
寒冷似乎把聲音都凍結了,
兩個人沉默著,牽手望著星空。
雪が降り続いて外に出られない日には、
ミミとルカは部屋の電気を消して
白い壁にスライドを映して一緒にながめた。
二重に架かった虹、砂漠の星空、
オーロラの空の下で凍るシャボン玉・・・
ふたりは空想の中で色々な國を旅した。
大雪連天不能外出的日子里,
咪咪和路卡關掉房間里的燈
一起觀看映在白色墻壁上的投影。
雙層的彩虹,沙漠的星空
極光籠罩的天空下結冰的泡泡……
兩個人在空想中的各個國家旅行。
出會った頃からずっと未完成の曲を弾きながら、
部屋によく來ていた黒貓が來なくなったねとルカが言った。
淋しいねとミミは言った。
ルカはピアノを弾く手を止めて、
この曲は、離ればなれになっても、必ずまたどこかで會えるっていう
テーマで作っているんだ、きっとまた會えるよと言って、
また続きを弾き始めた。
路卡一邊彈奏著相遇至今一直未完成的曲子
一邊說著經常來到房間的黑貓不來了呢
咪咪說好冷清啊
路卡彈琴的手停了下來
即便離別,也一定會在某個地方再會
這首曲子就是為這個主題而作,一定會再遇見的哦
說著又開始彈奏
春。出會ってから25個目のボタンをルカのシャツにつけた次の日、
ミミの部屋のポストに小さな鍵を殘してルカはいなくなった。
ミミはその鍵でルカの部屋の扉を開けようとした。
でも鍵は全く合わなかった。
ミミは毎日ルカの帰りを待った。
でもルカの部屋のピアノが鳴ることはもうなかった。
春天。為路卡釘上相遇以來第25個扣子的第二天,
咪咪房間的郵筒里留下一把小鑰匙,路卡不見了。
咪咪想用那把鑰匙打開路卡的房門
但是根本不合適
咪咪每天等著路卡回來
但是,路卡的房間再也沒有響起鋼琴的聲音
夏。ミミのもとにひとつの小包が屆いた。
差出人はルカで住所はパリからだった。
急いで開けると中には鍵のかかったオルゴールが入っていた。
ルカが殘していった鍵はこのオルゴールにぴったりと合った。
開けるとルカがいつも弾いていたあの曲が流れだした。
オルゴールの中にはミミが今までにルカのために縫い付けてあげた
25個のボタンと、小さな封筒が入っていた。
夏天。咪咪收到一個包裹。
寄件人路卡,住址巴黎
急忙打開,里面是一個加鎖的八音盒
路卡留下的鑰匙正好能打開這個八音盒
打開后,流淌出路卡以前一直彈奏的那首曲子
八音盒里裝著咪咪至今為路卡釘上的25個扣子
和一個小信封。
封筒の中には、パリで開かれるピアノリサイタルのチケットが入っていた。
演奏者の名前はルカだった。
チケットの裏には一言だけ、こう書いてあった。
シャツのボタンが取れてしまったから付けに來てほしい ールカー
オルゴールの曲は最後まで完成していた。
その音色に誘われるように、あのいなくなった黒貓が部屋に入ってきた。
信封里裝著將在巴黎舉辦的鋼琴獨奏會入場券。
演奏者的名字是路卡。
入場券上只寫了一句話。
襯衫的扣子掉了,想讓你來釘。 ——路卡——
八音盒的曲子演奏完了。
好像受到那個音色的吸引,那只消失的黑貓來到了房間里。
ミミはまたルかに戀をした。
咪咪還是愛著路卡。
おわり
終