これは、宋代第一流の詩(shī)人蘇軾の七言絶句「春夜」の起句である。
春宵一刻直千金、
花に清香あり月に陰あり。
歌管樓臺(tái)聲細(xì)細(xì)、
鞦韆院落夜沈沈。
蘇軾の號(hào)は東坡、父を洵といい弟を轍といい、それぞれ唐宋八家文の一人として有名である。また蘇軾は有能な官吏として活躍し、その反対派におとしいれられてしばしば地方官に左遷されるなどした。また學(xué)者としては歐陽(yáng)脩門下として名をはせ、歴史的立場(chǎng)から古典を解釈し批評(píng)するすぐれた業(yè)績(jī)を殘した。
當(dāng)時(shí)はこの蘇軾父子をはじめ、王安石?歐陽(yáng)脩?司馬光?程明道?程伊川などという逸材が多く輩出した異彩ある一時(shí)期であり、學(xué)問(wèn)と文化の歴史の上で一つの新しい境地を現(xiàn)出した。當(dāng)時(shí)のこうした代表的人物たちはいずれも、能吏であり、碩學(xué)であり、文豪であって、いろいろな面に才能をしめし、しかも各自はそれぞれ特徴ある個(gè)性の持主ではあったが、その底には共通した考え方や感じ方が流れている。それは人間の存在、或いは心の活動(dòng)というものを宇宙の中の一存在として客観的に見(jiàn)ようと努力したことである。そこから生れて來(lái)る彼らの人生哲學(xué)は、他の時(shí)代の人たちにくらべ哲學(xué)的であり、思索的であり深みがあった。また自我にとらわれるという生き方を、もしくは現(xiàn)象にとらわれ或いはこだわりすぎるという考え方を止揚(yáng)できたから、その生活感情にはのびのびとしたところがあり、文人気質(zhì)を持っていた。蘇軾はそういう面で殊に代表的である。「春夜」の詩(shī)にもその生活感情と文人気質(zhì)が強(qiáng)くあらわれている。
過(guò)ぎやすい春の夜の一刻一刻を千金の値あるものとして買い取り味わっている作者は、ただ「春宵はよいものだなぁ」といっているだけではなさそうだ。今すぎてゆく一刻一刻にこそ人生を充足させるすべてがあるといっているのであろう。そのすべてとは何か？ 花であり、花の清香であり、それを照らす月であり、その光を映す葉であり、庭のかすかにゆれる月影であり、寒くもなく暖かくもなく、なまめかしい空気である。人間のあらゆるいとなみがこの刻一刻にくらべて何ほどの価値があろう。
樓臺(tái)の歌も管弦も院落(庭のこと)に立てば、細(xì)く遠(yuǎn)くから聞こえてくる。それは管弦の場(chǎng)所にあって聞き、あるいはみずから歌い弾ずるよりはおもむきがあるというもの。おもむきがあるというよりは作者の心に深くふれる何かであり、離れて聞こえてくればこそ、その何かがしみじみとわかるというものか。
庭の鞦韆は乗る乙女もなくて垂れさがる。垂れさがって動(dòng)かぬまま、春の夜は、手をふれればこわれそうなもろい姿をして、沈沈とふけてゆく。
蘇軾の詩(shī)はさわやかで飄逸だといわれる。行雲(yún)流水のごとく自然でたくらみがないといわれる。
春宵一刻直千金、
花に清香あり月に陰あり。
歌管樓臺(tái)聲細(xì)細(xì)、
鞦韆院落夜沈沈。
蘇軾の號(hào)は東坡、父を洵といい弟を轍といい、それぞれ唐宋八家文の一人として有名である。また蘇軾は有能な官吏として活躍し、その反対派におとしいれられてしばしば地方官に左遷されるなどした。また學(xué)者としては歐陽(yáng)脩門下として名をはせ、歴史的立場(chǎng)から古典を解釈し批評(píng)するすぐれた業(yè)績(jī)を殘した。
當(dāng)時(shí)はこの蘇軾父子をはじめ、王安石?歐陽(yáng)脩?司馬光?程明道?程伊川などという逸材が多く輩出した異彩ある一時(shí)期であり、學(xué)問(wèn)と文化の歴史の上で一つの新しい境地を現(xiàn)出した。當(dāng)時(shí)のこうした代表的人物たちはいずれも、能吏であり、碩學(xué)であり、文豪であって、いろいろな面に才能をしめし、しかも各自はそれぞれ特徴ある個(gè)性の持主ではあったが、その底には共通した考え方や感じ方が流れている。それは人間の存在、或いは心の活動(dòng)というものを宇宙の中の一存在として客観的に見(jiàn)ようと努力したことである。そこから生れて來(lái)る彼らの人生哲學(xué)は、他の時(shí)代の人たちにくらべ哲學(xué)的であり、思索的であり深みがあった。また自我にとらわれるという生き方を、もしくは現(xiàn)象にとらわれ或いはこだわりすぎるという考え方を止揚(yáng)できたから、その生活感情にはのびのびとしたところがあり、文人気質(zhì)を持っていた。蘇軾はそういう面で殊に代表的である。「春夜」の詩(shī)にもその生活感情と文人気質(zhì)が強(qiáng)くあらわれている。
過(guò)ぎやすい春の夜の一刻一刻を千金の値あるものとして買い取り味わっている作者は、ただ「春宵はよいものだなぁ」といっているだけではなさそうだ。今すぎてゆく一刻一刻にこそ人生を充足させるすべてがあるといっているのであろう。そのすべてとは何か？ 花であり、花の清香であり、それを照らす月であり、その光を映す葉であり、庭のかすかにゆれる月影であり、寒くもなく暖かくもなく、なまめかしい空気である。人間のあらゆるいとなみがこの刻一刻にくらべて何ほどの価値があろう。
樓臺(tái)の歌も管弦も院落(庭のこと)に立てば、細(xì)く遠(yuǎn)くから聞こえてくる。それは管弦の場(chǎng)所にあって聞き、あるいはみずから歌い弾ずるよりはおもむきがあるというもの。おもむきがあるというよりは作者の心に深くふれる何かであり、離れて聞こえてくればこそ、その何かがしみじみとわかるというものか。
庭の鞦韆は乗る乙女もなくて垂れさがる。垂れさがって動(dòng)かぬまま、春の夜は、手をふれればこわれそうなもろい姿をして、沈沈とふけてゆく。
蘇軾の詩(shī)はさわやかで飄逸だといわれる。行雲(yún)流水のごとく自然でたくらみがないといわれる。