奇貨居くべし

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時(shí)は戦國の末である。趙都邯鄲は國の衰えをよそに、中原文化の粋を集め、商業(yè)が盛んで、往來する諸國の人も多かった。韓の都陽テキの豪商呂不韋は商用でよく邯鄲に現(xiàn)われるのであるが、偶然、秦の太子安國君の庶子である子楚が、人質(zhì)としてこの都に住んでいることを知った。
    話の様子では、どうやらひどく困っているらしい。それから數(shù)日、ふとこの商人の頭にすばらしい霊感が閃いた。
    ――この奇貨居くべし!(こいつは掘り出し物だ。取って置けばいまにえらい値が出るぞ。)
    不韋はなにか大きな投機(jī)をするようなつもりで、すぐさま子楚の荒れはてた屋敷を訪れ、
    「ひとつ、あなたのお宅をお盛んにいたしましょう?!?BR>    と、突拍子もないことを言いだしたのである。冗談だろうと軽く受け流していた子楚も、
    「いえ、あなたのお宅がお盛んになれば、自然わたしどもの家も栄えるという寸法でして……?!?BR>    というなにか深いわけのありそうな様子に、奧の間に招じいれた。
    呂不韋は聲をひそめて、
    「よろしゅうございますか。昭襄王ももうお年ですから、やがてあなたのお父上の安國君さまが秦王におなりになりましょう。
    しかし正妃華陽夫人にはお子さんがありません。
    あなたも含めて二十?dāng)?shù)人ある庶子の方々のなかから、誰を太子におえらびになるでしょうか。
    正直な話、あなたは有利な立場(chǎng)にあるとは申しあげられません?!?BR>    「その通りだが、今さらどうにも……」
    「問題はそこです。わたくしには金がございます。
    華陽夫人への贈(zèng)り物や、ひろく人材を集めるための資金は出しましょう。
    直接秦まで行って、あなたを太子に立てていただくよう、運(yùn)動(dòng)もいたそうではありませんか。」
    子楚は手をとらんばかりにして、
    「もし君の言葉どおりになったら、いっしょに秦國を治めよう?!工取⑹膜盲?。
    呂不韋の財(cái)力と雄弁は、ついに不遇な一介の庶子を太子とすることに成功したのである。そして自分の子を身ごもっていた趙姫を初心な子楚に嫁がせ、生れた子が始皇帝となったのであるから、呂不韋の野望は見事に達(dá)成されたといってよい。子楚という奇貨は、呂不韋の手もとにおかれて、ついに暴騰したのだった(?史記??呂不韋列伝).