本課課文
私は田舎から北京へ來て、瞬く間に6年になる。その間耳に聞き目に見た國家の大事なるものは、數(shù)えてみれば相當あった。だが私の心にすべて何の痕跡も殘していない。もしその影響を指摘せよ、と言われた、せいぜい私の癇ぺきを募らせただけだ----もっと率直に言うと、日増しに私を人間不信に陥らせただけだ、と答えるほかない。
つの小さな出來事が、私にとって意義があり、私をかんぺきから離れてくれた。今でも私はそれが忘れられない。
それは民國6年の冬、ひどい北風が吹きまくっている日のことである。私は生活の必要から、朝早く出発しなければならなかった。ほとんど人っ子一人歩いていなかった。ようやく人力車を一臺つかまえ、s門まで行くように命じた。暫くすると北風がいくらか小止みになった。路上の埃は吹き清められ、何もない大道だけは殘り、車は一層スピードを増した。やがて門に行き著こうとするところ、不意に車の梶棒に人が引っかかって、ゆっくり倒れた。
倒れたのは女だった。髪は白がまじり、服もおんぼろだ。いきなり歩道から飛び出て、車の前を橫切ろうとしたのだ。車夫はかじを切って道をあけたが、綿のはみ出て袖なしの上著にポックがかけなかったために、微風にあおられて広がり、それが梶棒にかぶさったのだ。幸い車夫が早く車を止めたから良かったものの、そうでなかったら、ひっくり返って頭を割るほどの事故になったかもしれない。
女は地面に伏したままだし、車夫も足を止めてしまった。私は、その老婆が怪我したとは思えなかったし、外に誰もみていないのだから、車夫のことをおせいっかいなやつだと思った。自分からいざこざを起こし、その上私にも迷惑がかかる。
そこで私は「何ともないよ、やってくれ」と言った。
しかし、車夫は耳も貸さずに----聞こえなかったかもしれないが---梶棒を下ろして、老婆をゆっくり助け起こし、腕を支えて立たせてやった。そして尋ねた。
「どうしたね」
「怪我したんだよ」
私は思った。お前さんが倒れる所をこの目で見たんだぞ。怪我などするものか??裱预藳Qまっている。実に憎いやつだ。車夫も車夫だ。おせいっかいの度が過ぎる。それほど事を構(gòu)えたいなら、よし、どうとも勝手にしろ。
ところが車夫は、老婆の言うことを聞く、少しもためらわず、その腕を支えたまま、一足一足歩き出した。私は怪訝に思って前方を見ると、そこは派出所だった。大風の後とて、外は無人だった。車夫は老婆に肩を貸して、その派出所を目ざした。
この時ふと異様な感じが私を捉えた。埃まみれの車夫の後姿が、急に大きくなった。しかも去るにしたがって、ますます大きくなり、仰がなければ見ないくらいになった。しかも彼は、私にとって一種の威圧めいたものに次第に変わっていった。そしてついに、防寒服に隠されている私の「卑小」を絞り出さんばかりになった。
この時私の活力は、凍りついたように、車の上で身動きもせず、ものを考えもしなかった。やがて派出所から巡査が現(xiàn)れたので、ようやく車から降りた。
巡査は私のところへ來て言った?!袱醋苑证擒嚖蚴挨盲皮坤丹?。あの車夫は引けなくなりましたから」
私は反射的に、外套のポッケトから銅貨を一つかみ出し、巡査に渡した?!袱长欷蜍嚪颏恕?.」
風が全く止んだが、通りはまだひっそりしていた。私は歩きながら考えた。しかし考えが自分に觸れてくるのが自分でも怖かった。さっきのことは別としても、このひとつかみの銅貨は何の意味か。彼への褒美?私は車夫を裁ける??私は自分に答えられなった。
この出來事は、今でも良く思い出す。そのため私は苦痛に耐えて自分のことに考えを向けようと努力することにもなった。ここ數(shù)年の政治も軍事も、私にあっては、子供のころ読んだ「子曰、詩に云う」と同様、一つも記憶に殘っていない。この小さな出來事だけが、いつも眼底を去りやらず、時には以前に増して鮮明に現(xiàn)れ、私に恥を教え、私に奮起を促し、しかも勇気や希望を與えてくれるのである。
課文詞匯
詞匯Ⅰ
作 (さく) (0) [名] 著,著作,作品
訳 (やく) (1) [名] 譯,翻譯
またたく間 (またたくま) (3) [詞組] 瞬間,轉(zhuǎn)眼間
國家 (こっか) (1) [名] 國家
大事だ (だいじだ) (3) [形動] 重要,大事
相當 (そうとう) (0) [名] 相當,不少
痕跡 (こんせき) (0) [名] 痕跡
指摘する (してきする) (0) [動3] 指摘,指出
癇癖 (かんぺき) (0) [名] 脾氣,火氣
募る (つのる) (2) [動1] 越來越厲害
日増しに (ひましに) (0) [詞組] 日益,一天比一天
人間不信 (にんげんふしん) (5) [名] 看不起人,不相信人
陥る (おちいる) (3) [動1] 落入,陷入
意義 (いぎ) (1) [名] 意義,價值
引き離す (ひきはなす) (4) [動1] 拉開,拖開
北風 (きたかぜ) (0) [名] 北風
吹きまくる (ふきまくる) (4) [動1] 猛刮
人っ子一人 (ひとっこひとり) (6) [詞組] 一個人也……(接否定)
人力車 (じんりきしゃ) (4) [名] 人力車
つかまえる (0) [動2] 抓住,揪住
命じる (めいじる) (0) [動] 命令
小やみ (こやみ) (0) [名] 暫時停止
路上 (ろじょう) (0) [名] 路上
ほこり (0) [名] 灰塵,塵土
吹き清める (ふききよめる) (5) [動2] 刮凈
大道 (だいどう) (0) [名] 大道,大街
増す (ます) (0) [動1] 增加
行き著く (いきつく) (3) [動1] 到達
不意 (ふい) (0) [名] 忽然
かじ棒 (かじぼう) (2) [名] 車把
引っ掛かる (ひっかかる) (4) [動1] 掛上,卡住
白毛まじり (しらがまじり) (4) [名] 花白頭發(fā)
まじる (2) [動1] 混,雜
おんぼろ (0) [名] 破爛
いきなり (0) [副] 突然
歩道 (ほどう) (0) [名] 人行道
飛び出る (とびでる) (3) [動2] 跑出去
橫切り (よこぎる) (3) [動1] 橫過,橫穿
車夫 (しゃふ) (1) [名] 車夫
かじ (1) [名] 車把
綿 (わた) (2) [名] 棉花
はみ出る (はみでる) (3) [動2] 擠出,露出
袖なし (そでなし) (0) [名] 無袖
ホック (1) [名] 摁扣兒,子母扣兒
微風 (びふう) (0) [名] 微風
あおる (2) [動1] 吹動
かぶさる (3) [動1] 蓋上,蒙上,兜住
さいわい (0) [名] 幸運
伏す (ふす) (1) [動1] 躺,臥,趴著
老婆 (ろうば) (1) [名] 老太婆
おせっかいだ (2) [形動] 管閑事,多嘴多舌
やつ (1) [名] 家伙,東西
いざこざ (0) [名] 爭執(zhí),糾紛
耳を貸す (みみをかす) (2)+(0) [慣用] 傾聽
助け起こす (たすけおこす) (5) [動1] 扶(某人)起來
狂言 (きょうげん) (3) [名] 詭詐
憎い (にくい) (2) [形] 可憎,可惡
度が過ぎる (どがすぎる) (0)+(2) [慣用] 過度
事を構(gòu)える (ことをかまえる) (2)+(3) [慣用] 挑起事端
勝手にする (かってにする) (0)+(0) [慣用] 隨你的便
ためらう (3) [動1] 猶豫
ひと足 (ひとあし) (2) [名] 一步
歩き出す (あるきだす) (4) [動1] 向前走
けげんだ (0) [形動] 詫異,莫名其妙
前方 (ぜんぽう) (0) [名] 前面
派出所 (はしゅつしょ) (0) [名] 派出所
大風 (おおかぜ) (0) [名] 大風
無人 (むじん) (0) [名] 無人
異様だ (いようだ) (0) [形動] 異樣
感じ (かんじ) (0) [名] 感覺
ほこりまみれ (4) [名] 滿身灰塵
去る (さる) (1) [動1] 離開,消失
仰ぐ (あおぐ) (2) [動1] 仰望
威圧 (いあつ) (0) [名] 威壓
防寒服 (ぼうかんふく) (3) [名] 冬裝
卑小 (ひしょう) (0) [名] 微小,卑微
絞り出す (しぼりだす) (4) [動1] 榨出
身動き (みうごき) (2) [名] 活動身體
巡査 (じゅんさ) (1) [名] 巡警
反射的だ (はんしゃてきだ) (0) [形動] 反射(的)
外套 (がいとう) (0) [名] 外套
銅貨 (どうか) (1) [名] 銅元
ひとつかみ (2) [名] 一把
ひっそり (3) [副] 寂靜
觸れる (ふれる) (0) [動2] 摸,動,觸
ほうび (0) [名] 獎
裁く (さばく) (2) [動1] 裁判
苦痛 (くつう) (0) [名] 痛苦
軍事 (ぐんじ) (1) [名] 軍事
子曰く,詩に云う (しいわく,しにいう) [慣用] 子曰詩云
眼底 (がんてい) (0) [名] 眼底
去りやらず (さりやらず) (4) [詞組] 不能消失
鮮明だ (せんめいだ) (0) [形動] 鮮明
奮起 (ふんき) (1) [名] 奮起
勇気 (ゆうき) (1) [名] 勇氣
魯迅 (ろじん) (1) [專] 魯迅(人名)
竹內(nèi)好 (たけうちよしみ) (2)+(0) [專] 竹內(nèi)好(人名)
民國 (みんこく) (0) [專] 民國
S門 (Sもん) (1) [專] S門
…ものの,… …のことを~と思う (…のことを~とおもう)
~は別として(も) (~はべつとしても) どうとも ~も~だ
…もしない
詞匯Ⅱ
番 (ばん) (1) [名] 輪班、順序
真っ暗だ (まっくらだ) (3) [形動] 烏黑、漆黑
うそつき (2) [名] 說謊,撒謊
努力家 (どりょくか) (0) [名] 實干家
部下 (ぶか) (1) [名] 部下
言いわけ (いいわけ) (0) [名] 辯解
垣根 (かきね) (3) [名] 籬笆,柵欄
きりがない (2)+(1) [慣用] 沒完沒了
親不孝者 (おやふこうもの) (0) [名] 不孝順父母者
招待する (しょうたいする) (1) [動3] 招待
読み書き (よみかき) (2) [名] 讀寫,學問
きちんと (2) [副] 準確,不多不少
座り込む (すわりこむ) (4) [動1] (進去)坐下
かきたてる (4) [動2] 激發(fā),攪拌
仲直り (なかなおり) (3) [名] 和好,恢復關系
仲良くなる (なかよくなる) [動1] 關系好,和睦
馬がかける (うまがかける) (2)+(2) [慣用] 馬跑
水をかける (みずをかける) (0)+(2) [慣用] 澆水
時間をかける (じかんをかける) (0)+(2) [慣用] 花時間
聲をかける (こえをかける) (1)+(2) [慣用] 打招呼
迷惑をかける (めいわくをかける) (1)+(2) [慣用] 添麻煩
橋を架ける (はしをかける) (2)+(2) [慣用] 架橋
課程譯文
第 37 課 一 件 小 事
魯 迅 著
竹內(nèi)好 譯
我從鄉(xiāng)下跑到京城里,一轉(zhuǎn)眼已經(jīng)六年了。其間耳聞目睹的所謂國家大事,算起來也很
不少;但在我心里,都不留什么痕跡,倘要我尋出這些事的影響來說,便只是增長了我的壞
脾氣,--老實說,便是教我一天比一天的看不起人。
但有一件小事,卻于我有意義,將我從壞脾氣里拖開,使我至今忘記不得。
這是民國六年的冬天,大北風刮得正猛,我因為生計關系,不得不一早在路上走。一路
幾乎遇不見人,好容易才雇定了一輛人力車,教他拉到S門去。不一會,北風小了,路上浮
塵早已刮凈,剩下一條潔白的大道來,車夫也跑得更快。剛近S門,忽而車把上帶著一個
人,慢慢地倒了。
跌倒的是一個女人,花白頭發(fā),衣服都很破爛。伊從馬路上突然向車前橫截過來;車夫
已經(jīng)讓開道,但伊的破棉背心沒有上扣,微風吹著,向外展開,所以終于兜著車把。幸而車
夫早有點停步,否則伊定要栽一個大斤斗,跌到頭破血出了。
伊伏在地上;車夫便也立住腳。我料定這老女人并沒有傷,又沒有別人看見,便很怪他
多事,要自己惹出是非,也誤了我的路。
我便對他說,"沒有什么的。走你的罷!"
車夫毫不理會,--或者并沒有聽到,--卻放下車子,扶那老女人慢慢起來,攙著臂
膊立定,問伊說:
"你怎么啦?"
"我摔壞了。"
我想,我眼見你慢慢倒地,怎么會摔壞呢,裝腔作勢罷了,這真可憎惡。車夫多事,也
正是自討苦吃,現(xiàn)在你自己想法去。
車夫聽了這老女人的話,卻毫不躊躇,仍然攙著伊的臂膊,便一步一步的向前走。我有
些詫異,忙看前面,是一所巡警分駐所,大風之后,外面也不見人。這車夫扶著那老女人,
便正是向那大門走去。
我這時突然感到一種異樣的感覺,覺得他滿身灰塵的后影,剎時高大了,而且愈走愈
大,須仰視才見。而且他對于我,漸漸的又幾乎變成一種威壓,甚而至于要榨出皮袍下面藏
著的"小"來。
我的活力這時大約有些凝滯了,坐著沒有動,也沒有想,直到看見分駐所里走出一個巡
警,才下了車。
巡警走近我說,"你自己雇車罷,他不能拉你了。"
我沒有思索的從外套袋里抓出一大把銅元,交給巡警,說,"請你給他......"
風全住了,路上還很靜。我走著,一面想,幾乎怕敢想到自己。以前的事姑且擱起,這
一大把銅元又是什么意思?獎他么?我還能裁判車夫么?我不能回答自己。
這事到了現(xiàn)在,還是時時記起。我因此也時時煞了苦痛,努力的要想到我自己。幾年來
的文治武力,在我早如幼小時候所讀過的"子曰詩云"⑵一般,背不上半句了。獨有這一件
小事,卻總是浮在我眼前,有時反更分明,教我慚愧,催我自新,并且增長我的勇氣和希望。
一九二0年七月
課文語法
文法:
1、せいぜい…
一日読んでも、せいぜい20ページしか読めない。
案內(nèi)狀を出しても、せいぜい10人くらいしか集まらない。
休暇が取れたとしても、せいぜい3日間くらいだ。
2、…ものの、…
説明を聞いたものの、よくわからなかった。
電気があるからよいものの、なかったら真っ暗だ。
行くと答えたものの、行く気がしない。
3、~のことを~と思う
私は、彼のことを面白い人だと思っている。
私は、彼女のことを変わった人だと思っている。
私は、兄のことを努力家だと思っている。
4、…もしない
私の話を聞きもしない。
手紙を書きもしない。
學校に行きもしない。
言葉の使用の仕方:
1、國家の大事なるもの:これ國家の大事なり=これは國家の大事である。
2、かんぺきを募らせる:兄の新しい考え方は、父のかんぺきを募らせた。
3、人っ子一人:家の中には人っ子一人いないようだった。
4、行き著こうとするところ:日本が明治時代を迎えようとするところ、私の祖父は生まれた。
5、いざこざを起こす:垣根のことで、隣の人といざこざを起こした。
6、車夫も車夫だ:娘も娘だが、母親も母親でいい加減な生活をしている。
7、事を構(gòu)える:彼のような人間を相手に、一一事を構(gòu)えていてはきりがない。
8、どうとも勝手にしろ:お前のような親不孝者は、どうとも勝手にしろ。
9、考えが自分に觸れてくる:自己的想法不自學地為對方吸引,好像想法本身具有意志,來逼迫自己似的。
10、~は別として(も):友人は別としても、近い親戚くらいは招待しよう。
11、私にあっては:=私にとっては
12、去りやらず:その子供は捨てた貓のそばを去りやらず、じっと座り込んでいた。
13、以前に増して:病気が治ってから、彼は以前にも増して働くようになった。
14、いろんな「かける」:
どうぞ、いすにかけてください。
3に4をかけると12になる。
田中さんは、応接間の壁に絵をかけました。
これは、馬が野をかけているところを描いた絵です。
私は、毎朝植木に水をかけます。
出かけるときは、必ず家の鍵をかけてください。
ツバメが家の廊下に巣をかけました。
純子さんは友達に電話をかけています。
この料理は、時間をかけて作りました。
急に後ろから聲をかけられて、びっくりしました。
人に迷惑をかけないように注意しましょう。
昨年、瀬戸內(nèi)海に橋が架けられました。
私は田舎から北京へ來て、瞬く間に6年になる。その間耳に聞き目に見た國家の大事なるものは、數(shù)えてみれば相當あった。だが私の心にすべて何の痕跡も殘していない。もしその影響を指摘せよ、と言われた、せいぜい私の癇ぺきを募らせただけだ----もっと率直に言うと、日増しに私を人間不信に陥らせただけだ、と答えるほかない。
つの小さな出來事が、私にとって意義があり、私をかんぺきから離れてくれた。今でも私はそれが忘れられない。
それは民國6年の冬、ひどい北風が吹きまくっている日のことである。私は生活の必要から、朝早く出発しなければならなかった。ほとんど人っ子一人歩いていなかった。ようやく人力車を一臺つかまえ、s門まで行くように命じた。暫くすると北風がいくらか小止みになった。路上の埃は吹き清められ、何もない大道だけは殘り、車は一層スピードを増した。やがて門に行き著こうとするところ、不意に車の梶棒に人が引っかかって、ゆっくり倒れた。
倒れたのは女だった。髪は白がまじり、服もおんぼろだ。いきなり歩道から飛び出て、車の前を橫切ろうとしたのだ。車夫はかじを切って道をあけたが、綿のはみ出て袖なしの上著にポックがかけなかったために、微風にあおられて広がり、それが梶棒にかぶさったのだ。幸い車夫が早く車を止めたから良かったものの、そうでなかったら、ひっくり返って頭を割るほどの事故になったかもしれない。
女は地面に伏したままだし、車夫も足を止めてしまった。私は、その老婆が怪我したとは思えなかったし、外に誰もみていないのだから、車夫のことをおせいっかいなやつだと思った。自分からいざこざを起こし、その上私にも迷惑がかかる。
そこで私は「何ともないよ、やってくれ」と言った。
しかし、車夫は耳も貸さずに----聞こえなかったかもしれないが---梶棒を下ろして、老婆をゆっくり助け起こし、腕を支えて立たせてやった。そして尋ねた。
「どうしたね」
「怪我したんだよ」
私は思った。お前さんが倒れる所をこの目で見たんだぞ。怪我などするものか??裱预藳Qまっている。実に憎いやつだ。車夫も車夫だ。おせいっかいの度が過ぎる。それほど事を構(gòu)えたいなら、よし、どうとも勝手にしろ。
ところが車夫は、老婆の言うことを聞く、少しもためらわず、その腕を支えたまま、一足一足歩き出した。私は怪訝に思って前方を見ると、そこは派出所だった。大風の後とて、外は無人だった。車夫は老婆に肩を貸して、その派出所を目ざした。
この時ふと異様な感じが私を捉えた。埃まみれの車夫の後姿が、急に大きくなった。しかも去るにしたがって、ますます大きくなり、仰がなければ見ないくらいになった。しかも彼は、私にとって一種の威圧めいたものに次第に変わっていった。そしてついに、防寒服に隠されている私の「卑小」を絞り出さんばかりになった。
この時私の活力は、凍りついたように、車の上で身動きもせず、ものを考えもしなかった。やがて派出所から巡査が現(xiàn)れたので、ようやく車から降りた。
巡査は私のところへ來て言った?!袱醋苑证擒嚖蚴挨盲皮坤丹?。あの車夫は引けなくなりましたから」
私は反射的に、外套のポッケトから銅貨を一つかみ出し、巡査に渡した?!袱长欷蜍嚪颏恕?.」
風が全く止んだが、通りはまだひっそりしていた。私は歩きながら考えた。しかし考えが自分に觸れてくるのが自分でも怖かった。さっきのことは別としても、このひとつかみの銅貨は何の意味か。彼への褒美?私は車夫を裁ける??私は自分に答えられなった。
この出來事は、今でも良く思い出す。そのため私は苦痛に耐えて自分のことに考えを向けようと努力することにもなった。ここ數(shù)年の政治も軍事も、私にあっては、子供のころ読んだ「子曰、詩に云う」と同様、一つも記憶に殘っていない。この小さな出來事だけが、いつも眼底を去りやらず、時には以前に増して鮮明に現(xiàn)れ、私に恥を教え、私に奮起を促し、しかも勇気や希望を與えてくれるのである。
課文詞匯
詞匯Ⅰ
作 (さく) (0) [名] 著,著作,作品
訳 (やく) (1) [名] 譯,翻譯
またたく間 (またたくま) (3) [詞組] 瞬間,轉(zhuǎn)眼間
國家 (こっか) (1) [名] 國家
大事だ (だいじだ) (3) [形動] 重要,大事
相當 (そうとう) (0) [名] 相當,不少
痕跡 (こんせき) (0) [名] 痕跡
指摘する (してきする) (0) [動3] 指摘,指出
癇癖 (かんぺき) (0) [名] 脾氣,火氣
募る (つのる) (2) [動1] 越來越厲害
日増しに (ひましに) (0) [詞組] 日益,一天比一天
人間不信 (にんげんふしん) (5) [名] 看不起人,不相信人
陥る (おちいる) (3) [動1] 落入,陷入
意義 (いぎ) (1) [名] 意義,價值
引き離す (ひきはなす) (4) [動1] 拉開,拖開
北風 (きたかぜ) (0) [名] 北風
吹きまくる (ふきまくる) (4) [動1] 猛刮
人っ子一人 (ひとっこひとり) (6) [詞組] 一個人也……(接否定)
人力車 (じんりきしゃ) (4) [名] 人力車
つかまえる (0) [動2] 抓住,揪住
命じる (めいじる) (0) [動] 命令
小やみ (こやみ) (0) [名] 暫時停止
路上 (ろじょう) (0) [名] 路上
ほこり (0) [名] 灰塵,塵土
吹き清める (ふききよめる) (5) [動2] 刮凈
大道 (だいどう) (0) [名] 大道,大街
増す (ます) (0) [動1] 增加
行き著く (いきつく) (3) [動1] 到達
不意 (ふい) (0) [名] 忽然
かじ棒 (かじぼう) (2) [名] 車把
引っ掛かる (ひっかかる) (4) [動1] 掛上,卡住
白毛まじり (しらがまじり) (4) [名] 花白頭發(fā)
まじる (2) [動1] 混,雜
おんぼろ (0) [名] 破爛
いきなり (0) [副] 突然
歩道 (ほどう) (0) [名] 人行道
飛び出る (とびでる) (3) [動2] 跑出去
橫切り (よこぎる) (3) [動1] 橫過,橫穿
車夫 (しゃふ) (1) [名] 車夫
かじ (1) [名] 車把
綿 (わた) (2) [名] 棉花
はみ出る (はみでる) (3) [動2] 擠出,露出
袖なし (そでなし) (0) [名] 無袖
ホック (1) [名] 摁扣兒,子母扣兒
微風 (びふう) (0) [名] 微風
あおる (2) [動1] 吹動
かぶさる (3) [動1] 蓋上,蒙上,兜住
さいわい (0) [名] 幸運
伏す (ふす) (1) [動1] 躺,臥,趴著
老婆 (ろうば) (1) [名] 老太婆
おせっかいだ (2) [形動] 管閑事,多嘴多舌
やつ (1) [名] 家伙,東西
いざこざ (0) [名] 爭執(zhí),糾紛
耳を貸す (みみをかす) (2)+(0) [慣用] 傾聽
助け起こす (たすけおこす) (5) [動1] 扶(某人)起來
狂言 (きょうげん) (3) [名] 詭詐
憎い (にくい) (2) [形] 可憎,可惡
度が過ぎる (どがすぎる) (0)+(2) [慣用] 過度
事を構(gòu)える (ことをかまえる) (2)+(3) [慣用] 挑起事端
勝手にする (かってにする) (0)+(0) [慣用] 隨你的便
ためらう (3) [動1] 猶豫
ひと足 (ひとあし) (2) [名] 一步
歩き出す (あるきだす) (4) [動1] 向前走
けげんだ (0) [形動] 詫異,莫名其妙
前方 (ぜんぽう) (0) [名] 前面
派出所 (はしゅつしょ) (0) [名] 派出所
大風 (おおかぜ) (0) [名] 大風
無人 (むじん) (0) [名] 無人
異様だ (いようだ) (0) [形動] 異樣
感じ (かんじ) (0) [名] 感覺
ほこりまみれ (4) [名] 滿身灰塵
去る (さる) (1) [動1] 離開,消失
仰ぐ (あおぐ) (2) [動1] 仰望
威圧 (いあつ) (0) [名] 威壓
防寒服 (ぼうかんふく) (3) [名] 冬裝
卑小 (ひしょう) (0) [名] 微小,卑微
絞り出す (しぼりだす) (4) [動1] 榨出
身動き (みうごき) (2) [名] 活動身體
巡査 (じゅんさ) (1) [名] 巡警
反射的だ (はんしゃてきだ) (0) [形動] 反射(的)
外套 (がいとう) (0) [名] 外套
銅貨 (どうか) (1) [名] 銅元
ひとつかみ (2) [名] 一把
ひっそり (3) [副] 寂靜
觸れる (ふれる) (0) [動2] 摸,動,觸
ほうび (0) [名] 獎
裁く (さばく) (2) [動1] 裁判
苦痛 (くつう) (0) [名] 痛苦
軍事 (ぐんじ) (1) [名] 軍事
子曰く,詩に云う (しいわく,しにいう) [慣用] 子曰詩云
眼底 (がんてい) (0) [名] 眼底
去りやらず (さりやらず) (4) [詞組] 不能消失
鮮明だ (せんめいだ) (0) [形動] 鮮明
奮起 (ふんき) (1) [名] 奮起
勇気 (ゆうき) (1) [名] 勇氣
魯迅 (ろじん) (1) [專] 魯迅(人名)
竹內(nèi)好 (たけうちよしみ) (2)+(0) [專] 竹內(nèi)好(人名)
民國 (みんこく) (0) [專] 民國
S門 (Sもん) (1) [專] S門
…ものの,… …のことを~と思う (…のことを~とおもう)
~は別として(も) (~はべつとしても) どうとも ~も~だ
…もしない
詞匯Ⅱ
番 (ばん) (1) [名] 輪班、順序
真っ暗だ (まっくらだ) (3) [形動] 烏黑、漆黑
うそつき (2) [名] 說謊,撒謊
努力家 (どりょくか) (0) [名] 實干家
部下 (ぶか) (1) [名] 部下
言いわけ (いいわけ) (0) [名] 辯解
垣根 (かきね) (3) [名] 籬笆,柵欄
きりがない (2)+(1) [慣用] 沒完沒了
親不孝者 (おやふこうもの) (0) [名] 不孝順父母者
招待する (しょうたいする) (1) [動3] 招待
読み書き (よみかき) (2) [名] 讀寫,學問
きちんと (2) [副] 準確,不多不少
座り込む (すわりこむ) (4) [動1] (進去)坐下
かきたてる (4) [動2] 激發(fā),攪拌
仲直り (なかなおり) (3) [名] 和好,恢復關系
仲良くなる (なかよくなる) [動1] 關系好,和睦
馬がかける (うまがかける) (2)+(2) [慣用] 馬跑
水をかける (みずをかける) (0)+(2) [慣用] 澆水
時間をかける (じかんをかける) (0)+(2) [慣用] 花時間
聲をかける (こえをかける) (1)+(2) [慣用] 打招呼
迷惑をかける (めいわくをかける) (1)+(2) [慣用] 添麻煩
橋を架ける (はしをかける) (2)+(2) [慣用] 架橋
課程譯文
第 37 課 一 件 小 事
魯 迅 著
竹內(nèi)好 譯
我從鄉(xiāng)下跑到京城里,一轉(zhuǎn)眼已經(jīng)六年了。其間耳聞目睹的所謂國家大事,算起來也很
不少;但在我心里,都不留什么痕跡,倘要我尋出這些事的影響來說,便只是增長了我的壞
脾氣,--老實說,便是教我一天比一天的看不起人。
但有一件小事,卻于我有意義,將我從壞脾氣里拖開,使我至今忘記不得。
這是民國六年的冬天,大北風刮得正猛,我因為生計關系,不得不一早在路上走。一路
幾乎遇不見人,好容易才雇定了一輛人力車,教他拉到S門去。不一會,北風小了,路上浮
塵早已刮凈,剩下一條潔白的大道來,車夫也跑得更快。剛近S門,忽而車把上帶著一個
人,慢慢地倒了。
跌倒的是一個女人,花白頭發(fā),衣服都很破爛。伊從馬路上突然向車前橫截過來;車夫
已經(jīng)讓開道,但伊的破棉背心沒有上扣,微風吹著,向外展開,所以終于兜著車把。幸而車
夫早有點停步,否則伊定要栽一個大斤斗,跌到頭破血出了。
伊伏在地上;車夫便也立住腳。我料定這老女人并沒有傷,又沒有別人看見,便很怪他
多事,要自己惹出是非,也誤了我的路。
我便對他說,"沒有什么的。走你的罷!"
車夫毫不理會,--或者并沒有聽到,--卻放下車子,扶那老女人慢慢起來,攙著臂
膊立定,問伊說:
"你怎么啦?"
"我摔壞了。"
我想,我眼見你慢慢倒地,怎么會摔壞呢,裝腔作勢罷了,這真可憎惡。車夫多事,也
正是自討苦吃,現(xiàn)在你自己想法去。
車夫聽了這老女人的話,卻毫不躊躇,仍然攙著伊的臂膊,便一步一步的向前走。我有
些詫異,忙看前面,是一所巡警分駐所,大風之后,外面也不見人。這車夫扶著那老女人,
便正是向那大門走去。
我這時突然感到一種異樣的感覺,覺得他滿身灰塵的后影,剎時高大了,而且愈走愈
大,須仰視才見。而且他對于我,漸漸的又幾乎變成一種威壓,甚而至于要榨出皮袍下面藏
著的"小"來。
我的活力這時大約有些凝滯了,坐著沒有動,也沒有想,直到看見分駐所里走出一個巡
警,才下了車。
巡警走近我說,"你自己雇車罷,他不能拉你了。"
我沒有思索的從外套袋里抓出一大把銅元,交給巡警,說,"請你給他......"
風全住了,路上還很靜。我走著,一面想,幾乎怕敢想到自己。以前的事姑且擱起,這
一大把銅元又是什么意思?獎他么?我還能裁判車夫么?我不能回答自己。
這事到了現(xiàn)在,還是時時記起。我因此也時時煞了苦痛,努力的要想到我自己。幾年來
的文治武力,在我早如幼小時候所讀過的"子曰詩云"⑵一般,背不上半句了。獨有這一件
小事,卻總是浮在我眼前,有時反更分明,教我慚愧,催我自新,并且增長我的勇氣和希望。
一九二0年七月
課文語法
文法:
1、せいぜい…
一日読んでも、せいぜい20ページしか読めない。
案內(nèi)狀を出しても、せいぜい10人くらいしか集まらない。
休暇が取れたとしても、せいぜい3日間くらいだ。
2、…ものの、…
説明を聞いたものの、よくわからなかった。
電気があるからよいものの、なかったら真っ暗だ。
行くと答えたものの、行く気がしない。
3、~のことを~と思う
私は、彼のことを面白い人だと思っている。
私は、彼女のことを変わった人だと思っている。
私は、兄のことを努力家だと思っている。
4、…もしない
私の話を聞きもしない。
手紙を書きもしない。
學校に行きもしない。
言葉の使用の仕方:
1、國家の大事なるもの:これ國家の大事なり=これは國家の大事である。
2、かんぺきを募らせる:兄の新しい考え方は、父のかんぺきを募らせた。
3、人っ子一人:家の中には人っ子一人いないようだった。
4、行き著こうとするところ:日本が明治時代を迎えようとするところ、私の祖父は生まれた。
5、いざこざを起こす:垣根のことで、隣の人といざこざを起こした。
6、車夫も車夫だ:娘も娘だが、母親も母親でいい加減な生活をしている。
7、事を構(gòu)える:彼のような人間を相手に、一一事を構(gòu)えていてはきりがない。
8、どうとも勝手にしろ:お前のような親不孝者は、どうとも勝手にしろ。
9、考えが自分に觸れてくる:自己的想法不自學地為對方吸引,好像想法本身具有意志,來逼迫自己似的。
10、~は別として(も):友人は別としても、近い親戚くらいは招待しよう。
11、私にあっては:=私にとっては
12、去りやらず:その子供は捨てた貓のそばを去りやらず、じっと座り込んでいた。
13、以前に増して:病気が治ってから、彼は以前にも増して働くようになった。
14、いろんな「かける」:
どうぞ、いすにかけてください。
3に4をかけると12になる。
田中さんは、応接間の壁に絵をかけました。
これは、馬が野をかけているところを描いた絵です。
私は、毎朝植木に水をかけます。
出かけるときは、必ず家の鍵をかけてください。
ツバメが家の廊下に巣をかけました。
純子さんは友達に電話をかけています。
この料理は、時間をかけて作りました。
急に後ろから聲をかけられて、びっくりしました。
人に迷惑をかけないように注意しましょう。
昨年、瀬戸內(nèi)海に橋が架けられました。